一條裕子の目録

ぬかるみの女

  1. 第一話
  2. 第二話
  3. 第三話
  4. 第四話
  5. 第五話
  6. 第六話
  7. 第七話
  8. 第八話
  9. 第九話
  10. 第十話

あの頃の私。

2005/05/29(Sun)

ぬかるみの女」は、2000年頃に「めるちょ@」誌に書いていた、3割ほど実話のパソコンまんがである。 もちろん、私に「ばあや」はいない。

10話で連載を中断した後、文章を含む書下ろしを大量に入れて単行本化する話もあったのだけど、叶わないまま未練を残していた。 今回、フリースタイルから「エッセイっぽいマンガを」というお話があって、「ぬかるみの女」を引っ張り出すことにした。 簡単に言うと、「パソコンばっかいじってないで、仕事しろ」って話だけども。

実際、以前の私と言えば、週刊連載の ネーム と完成原稿が、それぞれ常に 2・3本ストックとして手元にあったりしたんだけど、今では見る影もない。 原稿を渡す約束の前日に、まだ仕事傍らパソコンの電源を落とせずにいたりする。

* * * * *

某月 15日までと言われた「フリースタイル」の原稿を、 「15日まで。ええとそれは、15日一杯まで掛かって、16日渡すってことでいいですか」と、セコく期日を延ばしながら描いている途中、 ちょっと確かめたいことがあって『メルちょ@』掲載分を見返したら、描いたはずのそのシーンがどうしても見つからない。 描いたと思ったけど気のせいかなぁ。描こうとしていて予定を変更したんだったかなぁ。 でも、あの背景、描いた記憶があるんだけど、やっぱり気のせいなのかなぁ。

描いたはずでも、ないものはない。掲載されたのは全部でたった 20ページ分だから、3回も見直せば見落とす可能性もありえない。 腑に落ちないまま諦めて、再び原稿に取り掛かったとき、「もしかして、描きかけた原稿があるのかな」と思いつく。

それにしても、単行本用にメモを書き溜めてはいたけど、原稿になんてしたかしら。 別の作品なら、ネームや下書きのままに終わっている原稿は、確かにいくつかあるんだけど。 それでもよくよく思い出してみると、「ぬかるみの女関係のナニカ」をまとめて封筒に入れたような心当たりが、うっすらとある。 というより、その封筒を置いた場所に、覚えがある。他の描きかけ原稿とは、違う場所だ。 「書き溜めたメモ」ってのは、パソコンの中だから、「封筒に入れたナニカ」というと……。

机のヨコの棚から「ナニカ」が入っている封筒を取り出し、中身を出して唖然とした。 そこには、20ページ分の完成原稿があったのだった。 いつの間にこんなの描いてたんだ。

侮れない、まだ勤勉さが残っていた「あの頃の私」。